図書館
►2008/09/14 23:31
革命よりだいぶ先。
別冊発売後に書いたもの。
堂上2人・小牧1人・手塚家双子の子供が出てきます。
堂上家の食卓話。
《平穏》と話は繋がるかもです。
そんな話は嫌だという方はスルーして下さい。
誤字とかあったら、こそりと教えてください。
幸福の花のたねさんの感想で、一気に浮かんだお話です。
ありがとうございました。
《ミニ班長》
「ただいまー」
「ただまー」
玄関から元気のいい声がしたかと思ったら、バタバタと2つの足音がした。
「おかえりー」
「ご飯出来てるから、手を洗って来い」
篤にそう言われて、子供達は連れ立って洗面所へと向かった。
洗面所からは上の子の「指の間まで洗え」などと言う小言が聞こえてくる。
「クスクス、ミニ堂上のお説教だ」
「ミニ笠原は相変わらず、手がかかるらしいな」
テーブルをセッティングしながら、篤と郁はおかしそうに顔を見合わせて笑った。
「いくー、てぇあらってきたよー」
「お前はーっ、ちゃんと手ぇ拭けー!!」
洗面所から出てきた下の子を、タオルを持った上の子が追い掛け回して拭くのはいつもの日課になっている。
「ねー、コイツにちゃんと手ぇ拭くように言ってよー。いっつもちゃんと拭かないんだよ!」
「ちゃんとふいてるもーん!はんちょーは、いつもうるさーい!」
いーっと下の子が歯をむけば、すかさずそこへ上の子が拳骨を落とす。
落とし方はまさに父親そっくりで、堂に入ったものだった。
「ねぇ、班長って何?」
「ゴリラたいちょーが、みにどうじょうはんのはんちょーっていったー」
郁の問いかけに、下の子は上の子を指差して元気に答えた。
「…ゴリラ…玄田隊長だろうが!」
「ゴリラそっくりじゃん、あの人。それに、そう呼んでいいって言ってるよ」
篤の呟きに上の子は、しれっと答えた。
小さい頃から玄田隊長の事を「ゴリラ隊長」と呼んでいるせいもあるが、玄田本人も気にせず子供達にそう呼ばせているせいで、子供達の間ではそう呼ぶのが当たり前になっている。
「で、アンタが班長なの?」
「んー、何かそうみたい。で、小牧が副班長だって。任命とか言われたしー」
そう言いながら下の子を抱えて椅子に座らせる上の子の顔は、どこか不本意だと言わんばかりに眉間に皺を寄せている。
「みにどうじょうはんのはんちょー」
きゃっきゃっと下の子は面白そうに騒ぐので、ますます上の子は不機嫌になって椅子にドカッと座った。
「じゃ、食べよっか」
全員テーブルについたのを確認してから、郁が声をかけると「いただきます」と一斉に手を合わせた。
「で、今日は何してたの?」
晩ご飯を食べながら、今日一日の事を話すのが堂上家の晩御飯の風景だった。
「小牧さん家で宿題やってから、チビ達連れて図書館に行ってた」
もぐもぐと口を動かしながら答える上の子に続いて、下の子も「おやつもらったー」などと報告する。
「お前、口に物入れて喋るな!こぼしてるだろー!」
上の子がぶつぶつ小言を言いながら、下の子の口の周りについたご飯粒を取ってやるのもいつもの事だった。
「そんなんだから、手塚の双子にも怒られるんだ」
「ちゃんとかたづけてるのに、てづかははんちょーみたいに、ちがうとかうるさんだよー!」
そう言って、勢いよく芋の煮っ転がしに箸を突き刺す下の子の姿に、郁のそれを重ねて篤は「ミニ笠原」とはよく言ったものだと苦笑する。
「お前が元の順番通りに本を片付けないからだ」
しれっと言い放つ上の子に頬を膨らませ、下の子はご飯をがつがつと勢いよくかき込んだ。
「よその家なんだから、キチンと片付ける事は大事だぞ」
篤にそう注意され、口を尖らせながらも頷く下の子に「いい子だな」と上の子が頭をぽんぽんとする姿に、今度は郁が篤の姿を重ねて苦笑する。
「図書館で本でも借りてきたの?」
「んー、返却図書を本棚に並べてきた」
上の子の思わぬ返答に、篤と郁は一瞬目を目を開いて驚いた。
「あさこさんのおてつだいしてきたー」
にこにこと笑う下の子は、どう見ても褒めてくれと言わんばかりだ。
「…何やってるんだ、お前達は」
篤はそう言って、盛大に溜息を吐いた。
「麻子さんが暇なら手伝いなさーいって。覚えといて損は無いからだって」
本を並べながら場所を覚えさせられ、終った後でそれをテストされたと聞いて、篤と郁は「何の英才教育だ」と内心思いながら、ただただ溜息を吐くのみだった。
「……この前みたいに危ない事じゃないからまだいいが、図書館員の仕事の邪魔するような事はするなよ」
「わかってるよ。それのこの前は、目の前に窃盗犯が走ってきたからだし」
口を尖らせて上の子は、「仕方が無かった」と抗議する。
先日図書の窃盗があったのだが、その窃盗犯の逃走経路の正面に堂上家を筆頭に、小牧家と手塚家のいつものメンバーの子供達がいたのだ。
居ただけならまだしも、あろう事か堂上家の上の子と小牧家の子が筆頭になって、犯人を捕まえると言うとんでもない騒動になったのだ。
「あんときはすごかったよね。ランドセル、ストライクだったもんね!」
下の子が思い出したように言うのを聞いて、篤の眉間に皺がよる。
そう、犯人に向かって教科書入りのランドセルを、堂上家の上の子と小牧家の子がぶつけたのだ。
それもう見事に犯人の顔面と胴にヒットさせた上に、残りの下の子3人がパチンコでどんぐりをぶつけると言う連係プレーまでして見せた。
聞けばパチンコは子供達が言うところの「ゴリラ隊長」が与えた上に、狙い方は進藤三監と緒形三監に習っていると言う事だった。
「…図書館員がすぐ駆けつけてたからいいようなものの、あんな危ない真似は絶対にするなよ!」
「わかってるって。アレは吉田達がすぐ後ろに見えたからだもん」
篤の小言に平然と答える上の子に、郁は困ったようなおかしそうな笑みを浮かべ、それとは対照的に篤の眉間の皺は深くなった。
「でも、アレだよねー。教科書の詰まったランドセルって、一種の武器だよねー」
「まぁね。でも教科書とか散らばって大変だった」
あはははと笑う郁と上の子と、拾うの手伝ったと得意げな下の子に、篤は半ば説教を諦めて溜息を吐くしか無かった。
子供達が図書窃盗犯を捕まえたと言う事は、その直後に連絡が入って堂上班全員が慌てて子供達の元に駆けつけた。
駆けつけたのだが、子供達は暢気にご褒美の缶ジュースを飲みながら、小会議室でのんびり寛いでいたのだ。
挙句、「お手柄だってー」などと報告してくる始末で、その場に居た子供達の親が全員頭を抱えたり苦笑したりするしかなかった。
この一件で一番ご機嫌だったは玄田隊長を筆頭とする特殊部隊で、お祝いムードになっている隊員達に「やめてくれ!」と怒鳴ったのは、堂上と手塚だけだったりもしたのだが。
「班長なんだから、ちゃんと下の子の面倒見なきゃだめよー」
おかしそうに言う郁に、「わかってる」とデザートの郁の手作りプリンを上の子は冷蔵庫から持って来た。
「でもさ、こいつが一番言う事聞かないんだ」
「ちゃんときいてるー!」
そう言ってたくさん入っている方のプリンを素早く取った下の子に、上の子は呆れて溜息を吐いただけだった。
「危ない事には首を突っ込むなよ、頼むから」
「それはわかってるんだけどねー、無理な時は仕方ないから」
ランドセルぶん投げ事件みたいにーと言う上の子に、この無茶っぷりは誰に似たのかと篤は頭を抱えたくなった。
「ごちそうさまー」
手を合わせ終ると子供達は、揃ってテレビの前に座ってアニメを見出した。
「それ見終わったらお風呂ねー」
「わかったー」
食器を洗いながら郁が声をかければ、揃って返事が返ってきた。
「ホントにあいつらの、あの無茶は誰に似たんだ!」
郁から洗い終わった食器を受け取りながら、ブツブツ言っている篤に郁は吹き出した。
「誰って、あたし達しかいないじゃない」
ケラケラと笑う郁に篤は眉間に皺を寄せて、それはそうだがとまだブツブツと言っている。
「それに特殊部隊希望なら、アレくらいで丁度いいと思うよー」
「は?なんだ、それは?」
「あれ?言ってなかったけ?あの子達、将来特殊部隊希望なんだって」
楽しみだねーなどと言う郁に、篤はぽかんとした顔をして見せた。
「俺は聞いてないぞ」
「そうだった?小牧教官とこも、手塚んとこもそうなんだって。手塚んとこの双子ちゃんなんて、お母さんの右腕になるんだーだってー。手塚の立場無さ過ぎだよねー」
それはもうおかしくて仕方が無いとばかりに、郁は笑いながら篤に告げた。
「まぁなぁ」
苦笑して子供達を見る篤は、どこか複雑そうな顔をした。
「図書館員にしろ、あの子達が本当にやりたい事見つけたらさ、全力で応援してあげようね。篤さん」
洗い終わった最後のお皿を篤に手渡しながら、郁は穏やかな笑みを浮かべてそう篤に告げた。
その言葉と郁の顔を見て、篤も「そうだな」と短く返した。
「コイツと一緒にお風呂入ってくるねー」
「ちょっとおふろにいれられてくるねー」
下の子を後ろから抱きかかえ、半ば引きずる様にして上の子はリビングからお風呂へと向かった。
廊下の方からは「あひるたいちょう」だの「みずてっぽう」だの聞こえてくる辺りから、子供達のお風呂は今日も長そうだと、篤も郁も顔を見合わせ苦笑した。
教科書の詰まったランドセルは、鈍器の1種だと思います。
人に投げつけていいものではありません。
パチンコどんぐり(エ○ァとか海○語とは違います)も、人に向けて撃ってはいけません。
パチンコで遊ぶ時は、周囲に気をつけて下さい。
くれぐれも、良い子の皆さんは真似してはダメですよ。
ミニ堂上班の一騒動は、捕り物でした。
ありえなーい!!と言うツッコミは、書いた本人がよくわかってますからー!!
ランドセルとかパチンコは、子供の頃の経験から(え?)
教科書が詰まったランドセルは、本当に鈍器で武器になりますからね。
…どんな子供だったかは、聞かない方向で……。
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